「あの子、最近なんか変わりましたよね」
ある管理職の方から、こんな言葉を聞いたことがあります。
「何が変わったのか、うまく言葉にできないんですけど……なんか、前より話しかけやすくなったというか。自分から報告してくるようになったというか」
その「変わった子」に後で話を聞いてみると、こう言っていました。
「伝え方を少し変えてみたんです。結論から先に言うようにしたとか、相談するときに自分の考えを一緒に持っていくようにしたとか。それだけで、上司の反応が全然違くて」
たったそれだけのことで、と思うかもしれません。
でも実際に、「伝え方」がほんの少し変わるだけで、仕事の景色は大きく変わります。
今回のコラムでは、「周囲を巻き込む伝え方」が身につくことで、若手社員の仕事がどう変わるのかをお伝えします。
若手社員本人はもちろん、若手を育てる立場の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
なぜ「伝え方」ひとつで、こんなに変わるのか
「伝え方」というと、プレゼンのスキルや話し方のテクニックをイメージする方もいるかもしれません。
でも、ここで言う「伝え方」はもっと日常的なものです。
朝、上司に「昨日の件ですが、○○という状況で、今日中に対応します」と一言添えられるかどうか。
困ったとき、「どうしたらいいですか?」ではなく「こう考えているのですが、どう思いますか?」と相談できるかどうか。
チームで動くとき、「やっておきます」ではなく「私がAをやるので、Bをお願いできますか?」と言えるかどうか。
こういった日常の小さな「伝え方」の積み重ねが、職場での存在感を変え、評価を変え、仕事の進み方を変えていきます。
これまで多くの企業の育成支援に携わってきた経験から感じることがあります。
「伝え方」が変わった若手は、まるで別人のように職場での立ち位置が変わっていく——その変化を、何度も目にしてきました。
変化① 上司・先輩との関係が変わる
「伝え方」が変わると、最初に変わるのが上司や先輩との関係性です。
「何を考えているかわからない」と思われていた若手が、結論から話すようになった途端に、上司の反応が変わります。
「あ、こいつわかってきたな」という空気が生まれ、任せてもらえる仕事が増えていきます。
相談の仕方が変わると、先輩との距離感が縮まります。
「どうしたらいいですか?」という投げかけより、「こう考えているのですが、どう思いますか?」という問いかけの方が、先輩も「一緒に考えよう」という気持ちになりやすい。
Tenmaruがこれまで関わってきた若手社員の中で、
「伝え方を変えてから、上司との1on1が楽しくなった」という声を聞いたことがあります。
「どうせ言っても……」という諦めが、「話してみよう」という前向きさに変わったのだそうです。
「伝わる」という体験が、関係性をつくります。
そしてその関係性が、次の「伝えてみよう」という行動を生み出します。
変化② 仕事のスピードと質が上がる
「伝え方」が変わると、仕事そのものの進め方が変わります。
一人で抱え込んでいた仕事を、早めに相談できるようになる。
「詰まったら聞いていいんだ」という感覚が生まれると、問題が小さいうちに解決できるようになります。
「報告・連絡・相談」という言葉は、社会人になってすぐに習うものです。
でも、「どのタイミングで」「どんな形で」「何を添えて」伝えるかは、実は誰も教えてくれないことが多い。
この「HOW」の部分が身につくと、情報の流れがスムーズになり、チーム全体の仕事のスピードが上がります。
また、「自分の考えを持ってから相談する」という習慣が身につくと、思考力そのものが鍛えられます。「どう思いますか?」と聞く前に「自分はこう思う」を整理する、このプロセスが、若手の問題解決能力を着実に高めていきます。
変化③ 「自分から動ける人」になる
「伝え方」が変わると、主体性が生まれます。
これは不思議なことのように聞こえるかもしれません。
「伝え方と主体性、何の関係があるの?」と思う方もいるかもしれない。
でも、関係があるのです。
自分から動けない若手の多くは、「動いていいかどうかわからない」状態にいます。
その「わからなさ」の多くは、「自分の考えを伝える方法がわからない」ことから来ています。
「こうしたいと思っているんですが、いいですか?」と言えない。だから動けない。これが「指示待ち」の正体のひとつです。
逆に、「伝える方法」がわかると、「こうしようと思っています」と言えるようになる。言えるようになると、動きやすくなる。動きやすくなると、「やってみた」という体験が積み重なる。その体験が、次の行動への自信になる。
「伝え方」の習得は、主体性を育てるもっとも手近な入口のひとつです。
変化④ チームの空気が変わる
一人の若手の「伝え方」が変わると、チーム全体の空気が変わることがあります。
「あの子、最近自分から報告してくれるよね」という空気が広がると、まわりの若手も「あ、そういうふうに動いていいんだ」と感じ始めます。
心理的安全性は、制度でつくるものではなく、誰かの小さな行動から生まれるものです。一人が「言っていいんだ」と気づいて動き始めると、それがチーム全体の「言いやすい空気」をつくっていく。
OJTを担うブラザー・シスターの先輩社員にとっても、新入社員が「伝え方」を身につけることで、日々のコミュニケーションがスムーズになり、育成の負担が減っていきます。
私が現場で何度も見てきた光景があります。
一人の若手社員が変わることで、チームの空気が変わり、それがやがて組織の文化になっていく。
「伝え方」には、そのくらいの力があります。

「伝え方」がOJTの課題とどうつながるのか、前回コラムとあわせてご覧ください。
「伝え方」は、センスじゃない。スキルだ。
ここで少し、本質的な話をさせてください。
「あの人は口がうまいから」「もともとコミュニケーションが得意だから」
そう思ったことはありませんか?
でも、それは違います。
「伝え方」は、生まれつきの才能でも、性格の問題でもありません。
学べるスキルです。
結論から話す。自分の考えを添えて相談する。
相手の立場を想像して言葉を選ぶ。
これらはすべて、意識して練習すれば身につくことです。
おしゃべりが得意な人が「伝え方が上手」とは限らない。
むしろ、口数が少なくても、伝えるべきことを的確に届けられる人の方が、職場では圧倒的に信頼される。
「伝え方」を学ぶことは、自分を変えることではなく、自分の持っている力を、もっとうまく届けるようになることです。
パピヨン麻衣さんと考える、「伝え方」の本質
今回のコラムと合わせて、9月17日の公開講座の講師をご紹介します。
講師を務めるパピヨン麻衣さんは、コミュニケーションデザインの専門家として、多くの企業や個人の「伝え方」を変えてきた方です。「うまく伝えられない」という悩みを持つ若手社員に、具体的で実践的なアプローチを届けてくれます。
「周囲を巻き込む伝え方って、どういうことなの?」
「伝え方を変えると、本当に仕事は変わるの?」
そんな疑問に、パピヨン麻衣さんが実践的なワークを通じて答えてくれます。詳細は公開講座のページをぜひご覧ください。

若手社員の「伝え方」の変化を引き出すために、管理職側に必要な視点を解説しています。
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こんな若手社員に受けてほしい:
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