企業紹介「石坂産業」—会社の改革は社会の未来を変える力に

20220825

こんにちは!お盆休みはいかがお過ごしでしたか。私はお休みをいただき久しぶりに実家のある香川に子供たちと帰省しておりました。田舎の緑あふれる自然と緩やかな時間の流れに身を任せ、パワー充電!この勢いで残暑を乗り切りたいと願っております。

さて、今回は新しい試みとして、私が感銘を受けた企業や経営者の方を、私なりの言葉で紹介させていただくシリーズを始めようと思います。

経営者としてはまだまだヒヨッコの私ですが、素晴らしい経営者の先輩、素晴らしいビジネスパーソンとの出会いによって、日々、たくさんの気づきを得ております。ありがとうございます。

今回ご紹介するのは、「カンブリア宮殿」「夢の扉」など、数々のメディアでも取り上げられているのでご存じかもしれませんが、石坂産業株式会社という企業さまです。(以後、敬称略で失礼いたします)

こちらの会社との出逢いは、私が仲良くしていただいているエナジーステーションさんが主催したワークショップに参加したことがきっかけでした。
私のこれまでの概念を覆す貴重な経験を少しでも多くの方々にお伝えしたいと思ったのです。

この記事を機会に、皆さまにも感動を共有できれば幸いです。
私が感銘を受けた事業内容とその理念に迫ってみたいと思います。

目次

産業の「概念」を覆す

ゴミのイメージ

皆さんは、「産業廃棄物」と聞くと、どのようなイメージが浮かびますか。また、「産廃業者」という言葉の響きから、何を感じますか。

大変失礼な話なのですが、ネガティブなイメージが浮かんでくる方も多いのではないでしょうか。

偏見を承知で書きますが、環境汚染、第三国での不正、不法投棄、職業倫理が浸透しづらい業界体質…私も社会人になるまではこのような印象を持っていました。

もちろん、そういった側面があるのも一部、事実なのかもしれません。石坂産業が素晴らしいのは、そういったイメージを持たれるやすいことを重々承知のうえ、「産廃業」そのものの概念を覆すという、不可能とも思えるミッションに挑み、成功しつつあるところです。

「産廃」というミッション

握手

現社長、石坂典子さんがお父様から代表を引き継いだ2002年。
当時の産業廃棄物業界には逆風の嵐が吹き荒れていました。

1999年、産業廃棄物処理施設からのダイオキシン汚染問題が大きく報道され、全国で産業廃棄物業者への排斥運動が起こりました。

プラカードを手に持ち、地元から出ていけ!と迫られる、まさにそんな中、自ら社長に立候補し、「会社を、業界を変える」と決心されるなんて、本当に凄いことです。

従来のイメージに加え、報道により大きく損なわれた「産廃業者」のイメージ。

しかし思い出してください。私たちは毎日の生活で、たくさんのモノを買い、消費し、そして捨てているはずです。

それら「モノ」が行き着く先が、産廃業者。私たちの生活に不可欠な存在なのです。

近年、コロナ禍の影響で「エッセンシャルワーカー」という言葉が定着しましたが、産廃業者もまた、エッセンシャルワーカー。社会が回るうえで絶対に必要な仕事です。しかし、世間的な評価は得られない。

当時、石坂産業では大きな投資を行い、ダイオキシンに対して完全な対策を実施していました。しかし、いくらお金をかけても、誠実に対応しても、世間の「イメージ」が先行し、反対運動は続きました。

そして何より、こういった世間の声によって、従業員が自分達の仕事を誇ることができなくなっていたそうです。

石坂社長も当時はさぞかし無念であったことと思います。そして「会社を、産廃業界を変える」という大きなミッションに挑んでいくことになります。

まず最初に始めたことは、お客さまや社員同士が「あいさつができる」「ありがとうが言える」社会人としての基本を徹底するところから。地道にコツコツ取り組まれたそうです。そして、年月をかけて働きやすい職場環境や組織体制を見直し、今では年次に関係なくいろんなことに主体的に取り組めるプロジェクト単位でのチャレンジを実践されています。

また今回のワークショップのツアーを取り仕切って下さったのが入社二年目の社員さんで、会社の取り組みや活動への想いについて、じぶんごととして自分の言葉でとても熱心にお話しいただいたことにも感動しました。自社に誇りを持つことの重要性を改めて再認識しています。

革新的な取り組み

会社の改革と共に、「産業廃棄物」のイメージをも変える数々の取り組み。実にたくさんの取り組みに挑戦されていますが、そのほんの一部をここで紹介いたします。

社内環境

石坂産業は、環境に配慮した施設作りを徹底的に行っています。有害物質への対応は当然のこと、働く従業員の為の環境づくりにも力を入れています。

また、RE100の企業であり、社内で使う全ての電力が再生エネルギーであること。

RE100は、国際的なイニシアチブ(積極的な取り組みの枠)で、企業が使う電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことを宣言し、地球温暖化対策としても注目を集めています。
参考:環境省RE100の取組|環境省

さらに、一部の電力を太陽光発電、地熱発電、蓄電「vpp」をしており、それらを使って施設を動かしています。機器類を動かす電気はすべて産廃時に出たエネルギーを使い自家発電しています。

社内でエネルギーの循環を達成している、まさにSDGsの最先端です。

石坂産業の取り組み
電気で機械を動かすことによって室内の温度が一定に保つように工夫されていて、スタッフが働きやすいよう工夫されています。
石坂産業の取り組み2
作業場にホコリが立たないように、ある一定の頻度で霧吹きのシャワーが出るようになっているのも健康への配慮です。

地域に根ざした環境整備

産業廃棄物と聞くと、誰しも思い浮かべるのが不法投棄。かつては石坂産業のある地域でも、同業他社による不法投棄がありました。

産廃業者は環境を破壊するもの、こういったイメージを払拭するべく、石坂産業は、自らで地域の環境整備に乗り出しました。

地元の方と協力し、東京ドーム4.5個分の森林を整備、管理。豊かな里山へと蘇らせました。不法投棄は管理された場所では起こりにくくなります。不法投棄を撤去するだけではなく、さらに先へ

不法投棄をされない、生物多様性の保全に配慮した森林は、今では里山公園となり、各種ワークショップや体験型アクティビティなどを通して環境保全とサスティナブル社会の実現へ情報を発信し続けています。

里山
ごみの山は、ゲンジボタルや、絶滅危惧種のニホンミツバチが生息する自然豊かな森となり、生物多様性を評価する「JHEP認証」で、最高ランク「AAA」に認定されています。

脅威のリサイクル率

一般的な産業廃棄物のリサイクル率は55%前後と言われています。

対する石坂産業のリサイクル率は、脅威の98%。すでにこれはゴミではなく、資源と呼んでもよい割合ではないでしょうか。

業界随一のリサイクル率を誇る石坂産業は、それでもまだ足りない、と言います。目標はズバリ、100%のリサイクル率。
それを成し遂げてこそ、本当の意味でのSDGs社会である、と高い理念を持っている会社なのです。

ゴミ問題の解決は、ゴミをなくすこと。ゴミはゴミではなく、資源なのです。
100%のリサイクル率なんてまるで夢のような話ですが、98%のリサイクル率を実現している石坂産業なら、夢ではないと思えてきますね。

石坂産業のリサイクル
徹底的な分別、仕分けにより驚異的なリサイクル率を実現しています。

行政、研究機関、教育機関との協力

地域一丸となって環境保全、整備をする中で、第三セクターや研究機関とも協力し、さまざまなプロジェクトを進めています。

また、教育機関とも連携し、次世代への環境教育にも力を入れています。

それら包括的な環境問題、循環型社会の実現へ向けた取り組みが認められ、数々の表彰を受けています。

廃棄問題は、製品が作られる時に始まる

石坂産業タグライン

…と、このようにたくさんの先進的な取り組みをしている石坂産業ですが、詳しい沿革などはホームページをご覧いただき、ぜひ実際に足を運んでいただきたい(笑)!

石坂産業の素晴らしいところは、すべての活動において、環境保全と循環型社会の実現に向けた、「具体的な」取り組みを実践しているところです。

私が参加したワークショップで、ある方が質問したことに石坂社長がモノづくりへの想いを話していただいたシーンが特に印象的でした。

例えば、電気自動車。環境に配慮した製品の代表格、その中でも認知度、普及率ともにトップクラスのエース的存在です。

しかし、どんなモノにも寿命があります。そして廃棄する際、実は素材の中に、処理が非常に難しい部品が多く使われているそうです。

利用時に化石燃料を使わなくても、車体の廃棄にかかるエネルギーが大きければ、意味がありません。

では、どうすればいいのか―
それは「製造の段階から、捨てる時のことまで考える」ことです。

例えば水道の蛇口。常に水が通る場所なので、腐食の問題を解決するため、複数の金属を利用して作られます。

すると、やはり廃棄が難しくなってしまいます。

石坂産業では、廃棄するだけでなく、メーカー側に廃棄しやすい製品作りの提案を行うこちもあるそうです。

製品が生まれ、使われ、廃棄される。

それらすべてに責任を持つ重要性を考えさせられますが、モノが生まれてから捨てられる、そのプロセスすべてに関わっていく姿勢には、代表の覚悟のようなものを感じずにはいられません。

「捨てる」その先まで見据えた消費行動を!

私たちが生きていく上で、モノの消費は必ず起こることです。
モノを作り、入手し、消費する…

この一連の消費行動の行き着く先は、「捨てる」「処理する」ということになるでしょうか。
「SDGs」という概念も、今やすっかり定着したように感じますが、最終的なモノの行き着く先である、「捨てる」ことに、私たちはあまりに無責任であったと痛感します。

最終処理を引き受けてくれる廃棄物処理業者は、本来なくてはならない、私たちにとって大変ありがたい存在であるにも関わらず、ネガティブイメージと偏見を持っていました。

しかし、石坂産業のような企業が自ら動き、意義ある活動を通して業界のイメージを、ひいては「捨てる」ことそのものの概念を変えていく…

素晴らしいことだとお感じにならないでしょうか。

私たちにできること

「ひとりひとりができることを」環境問題、SDGs周りでは、定型文のように使われる文言ですが、では具体的はどのようなことができるでしょうか。

個人で里山を再生させることは難しいでしょう。節電?それもピンときませんね。

まずは、「ゴミ」「廃棄物」に対して、最後まで責任がある、ということを自覚すること。
そのうえで、自らの消費行動を見直してみる。例えば、割高でもリサイクル可能なパッケージの商品を選ぶ、環境に配慮した会社の製品を利用するなどです。

私自身、少し前に環境問題に関心を持ち、SDGsについて学び始め、SDGsカタリストという肩書きを持っていますが、真の意味での実践はできていないのでは、と感じました。改めて、自分ができること、会社で取り組めること、できることから始めたいと思います。

エナジーステーション
このような機会を設けて頂いた石坂社長を始め、ワークショップを主催して下さったエナジーステーションの皆さま、ワークショップに一緒に参加して下さった皆さまとのご縁に感謝いたします。

私が石坂産業との出会いで得たものをたくさんの方に知ってもらいたい。そして、ひとりひとりができることを。そう心から願っております。

循環型社会の実現へ向けて、私も力になりたい!社会に貢献する組織作りにも積極的に取り組みます。

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