「自分がやった方が早い」その一言が、組織の成長を止めている。
そう頭ではわかっている。でも、手を止められない。
桜の季節が過ぎ、新緑が眩しい季節になってきましたね。
4月に入り、新年度がスタートして早3週間。
組織改編で新たに管理職に就いた方々も、そろそろ「最初の現実」と向き合い始める頃ではないでしょうか。
「管理職になる前は、仕事が楽しかった気がする」
「メンバーのことを見てあげたいのに、自分の仕事で手一杯だ」
「部下に任せたいけど、クオリティが心配でどうしても口を出してしまう」
…こんな声、聞き覚えはありませんか?
あるいはあなた自身が、今まさにそういう状態にいるかもしれません。
今回のコラムでは、多くの企業で見過ごされてきた新任管理職のリアルな葛藤に焦点を当て、なぜこの悩みが生まれるのか、そして組織としてどう向き合うべきかをお伝えします。
7割以上の人事・管理職が「課題あり」と感じている現実
まず、数字からご覧ください。
リクルートマネジメントソリューションズ社の「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年」(2025年6月公表)によると、人事担当者・管理職ともに7割以上が管理職に関して課題感を持ち、最大の課題として「メンバーの育成」が挙げられています。

日本ではプレイングマネージャーが標準的な管理職の形態となっており、「現場業務とマネジメントの両立に追われる」という構造は今も変わっていません。
「プレイングマネージャー」という言葉自体が和製英語であるほど、この働き方は日本固有の色合いが強く、リクルートワークス研究所の「五カ国マネジャー調査」でも、アメリカでは部下の育成・モチベーション維持など「部下マネジメント」に時間を割く割合が高い一方、日本はプレイヤー業務の比重が相対的に高いという傾向差が示されています。
(出典:リクルートワークス研究所「管理職の働き方の国際比較 中国・タイ・インド・アメリカ・日本 五カ国マネジャー調査」)
しかし日本では、「現場をよく知る優秀なプレイヤーが管理職になる」という構造が長年続いてきました。
これ自体は必ずしも悪いことではありません。現場感覚を持ったリーダーの存在は、チームの信頼を生みます。
ただし、その「プレイヤーのまま管理職になった状態」が長く続くと、組織に深刻な歪みが生じてきます。
新任管理職の「最初の壁」
管理職に就任したばかりの頃は、多くの人が前向きです。
「チームをもっと良くしたい」
「部下の力を引き出したい」
そういった意欲を持って、新たな役割をスタートします。
ところが早い人では1〜2週間、遅くとも1〜2ヶ月ほど経つと、現実が見えてきます。
「結局、自分がやった方が早い」の罠
部下に仕事を任せようとしても、クオリティが安定しない。
説明する時間より自分でやる時間の方が短い。
気づけば、マネジメントではなく「スーパープレイヤー」として毎日を過ごしている—。
これは本人の怠慢ではありません。むしろ真面目で優秀な人ほど、この罠にはまりやすいのです。
「期待されていることが、よくわからない」という迷子感
プレイヤー時代は評価の軸が明確でした。数字、成果、スピード—わかりやすい指標があった。
しかし管理職になった途端、何をもって「よい管理職」なのかが曖昧になります。
マネージャーは様々なステークホルダーに囲まれながら「何を期待されていて、何を優先するべきなのか」を見失いがちになってしまいます。
上司からは「もっと部下を育てろ」と言われ、現場からは「もっと一緒に動いてくれ」と求められる。その間で揺れ続けることが、新任管理職の最初の大きな葛藤です。
「部下との距離感」がわからない
プレイヤー時代は「同僚」だった相手が、ある日突然「部下」になる。どこまで踏み込んでいいのか、どう接すればいいのか。
特に同世代や年上の部下を持つケースでは、関係性の構築に深く悩む管理職が多くいます。
「育てるより、自分がやった方が早い」が続くと何が起きるか
この状態が続くと、組織にじわじわと問題が積み重なっていきます。
「育てるより、自分がやった方が早い」という悪循環に陥り、メンバーの成長が止まります。部下の仕事が細分化されず、マネージャーだけが全体を見ている状態になり、トラブル対応がすべて管理職に集中する。育成の余裕がなく、メンバーが「指示待ち」化していく—。
そしてその先に待っているのが、管理職自身の疲弊です。
「なぜこんなに頑張っているのに評価されないんだろう」
「チームのために動いているのに、なんで孤独なんだろう」
優秀なプレイヤーが管理職になったとたんに苦しみ始める
——この構造は、個人の問題ではなく、会社・組織の仕組みの問題です。
この問題は本人の能力不足ではなく、組織構造に原因があります。
役割設計の曖昧さ、個人成果に偏った評価制度、権限委譲の仕組みが整っていないこと。
この3つの構造的要因が重なると、どれほど優秀な人材でもプレイングマネージャーとしての限界を迎えます。
では、何が変わると管理職は「機能」し始めるのか
Tenmaruが現場で多くの管理職と関わる中で見えてきた、管理職が「詰まり」から抜け出すために必要な3つのことをお伝えします。
①「自分の役割」を言語化する機会を持つ
多くの新任管理職は、「管理職とは何か」を誰かに教えてもらったことがありません。
プレイヤーとして優秀だったから昇進した—ただそれだけです。
だからこそ、「管理職である自分は何をすべき人間なのか」を言語化する場が必要です。
これは「研修で教わる」というより、「自分で考え、対話を通じて整理する」プロセスに価値があります。同じ立場の仲間と語り合うことで、「自分だけじゃないんだ」という安心感と、「では自分はどうありたいか」という自己認識が生まれてきます。
②「任せること」のスキルを学ぶ
任せられない理由の多くは「信頼していない」ではなく、「どう任せたらいいかわからない」です。
任せるには技術があります。
目標の設定の仕方、進捗の確認頻度、フィードバックのタイミング—
これらは感覚ではなく、学べるスキルです。
「任せてみたら、思ったより部下がやれた」という体験を積むことが、管理職の変容を加速させます。
③「マネジメントの成果」を可視化する仕組みを持つ
プレイヤー時代の成果は数字で見えやすい。
しかしマネジメントの成果—
「部下が成長した」「チームが自走し始めた」「離職が減った」は見えにくい。
この「見えにくさ」が、管理職のモチベーションを蝕みます。だからこそ、マネジメントの成果を言語化し、評価に組み込む仕組みが組織には必要です。そしてそれは、管理職本人が「マネジメントに時間を使っていいんだ」と安心できる環境づくりでもあります。

管理職に必須の「面談スキル」。部下と向き合う時間を最大化するための上司力について解説しています。
夏の研修シーズンを前に、「今」準備を始める意味
夏の研修シーズン(7月〜)に向けて、今から新任管理職研修を検討されている企業も多いかと思います。今がまさに「3ヶ月前の認知仕込み」の絶好のタイミングです。
ただ、研修さえやれば管理職は育つか—というと、残念ながらそうではありません。
研修は「気づきの場」であって、「変容の全て」ではないからです。
大切なのは、研修の前後に、組織として何を準備し、何を問い続けるかです。
就任から1〜3ヶ月の管理職は、今まさに「このやり方でいいのか」という揺れの中にいます。この揺れているタイミングにこそ、適切なインプットと対話の場を設けることが、最も効果的です。

管理職が陥りがちな「感覚的評価」の問題とパーソナリティ理解を活かした科学的なアプローチを紹介しています。
「管理職が育つ組織」は、意図的に設計されている
最後に、一つお伝えしたいことがあります。
管理職が育つ組織と、育たない組織の違いは、
「育てようという意図があるかどうか」です。
「優秀な人を管理職にすれば、あとは自分でなんとかするだろう」
この無言の期待が、日本企業における管理職の孤立を生み続けています。
管理職は、会社と現場をつなぐ、組織の要です。ここが機能するかどうかが、チームのパフォーマンスに直結し、離職率にも影響し、最終的には業績にも響いてきます。
「管理職を育てること」は、コストではなく、投資です。
そして、その投資を今この春に始めることが、夏以降の組織の景色を変えることにつながります。
ワクドキで、管理職もメンバーも輝く組織をつくっていきましょう!

部下側の「仕事の進め方」を知ることも、管理職として任せる力を育てる第一歩です。
新任管理職研修・管理職育成についてお悩みの方へ
㈱Tenmaruでは、新任管理職が「プレイヤーからマネージャーへ」と意識を転換し、自分なりのリーダーシップを見つけていくための研修プログラムをご提供しています。
新任管理職の基礎スキルから部下育成に大切な関わり方まで、座学だけでなく、対話・ロールプレイ・現場実践のサイクルを組み込んだTenmaru流の設計で、「わかった」を「できる」に変えていきます。
「うちの管理職、なんかうまくいっていないな」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。

