「うちの若手、なんで自分から動かないんだろう」
そのため息、聞こえてきます。
新緑がまぶしい5月。GWが明け、新入社員も若手社員も、少しずつ職場のリズムに慣れ始めるこの時期。
現場では、「ちゃんとやっているんだけど、もう少し自分で考えて動いてほしい」「指示したことはやるけど、それ以上が出てこない」そんなモヤモヤを抱えているリーダーや管理職の方が多いのではないでしょうか。
「今どきの若者は指示待ちで困る」
こんな言葉をよく耳にします。でも本当にそうでしょうか?
今回のコラムでは、「指示待ち」の本当の原因と、上司として今すぐできる「動く若手を育てる環境づくり」について、Tenmaruがこれまでの現場支援を通じて見えてきたことをお伝えしたいと思います。
「指示待ち」は若手のせいではない
まず、大切なことをお伝えします。
「指示待ち」は若手の性格の問題でも、やる気の問題でも、世代の問題でもありません。
Tenmaruがこれまで多くの企業の育成支援に関わる中で、繰り返し目にしてきた光景があります。
「なんであの子は自分で動かないんだろう」と嘆く上司の隣で、その若手社員は「何をすれば正解なのかわからなくて……」と戸惑っている。
動かないのではなく、動けないのです。
なぜそうなるのか。
Tenmaruが現場で見てきた「指示待ち」の根本には、ほぼ共通して「失敗したときの怖さ」と「動く基準の不明確さ」があります。
自分から動いて怒られた経験、余計なことをして迷惑をかけた経験、
そういった体験が積み重なった若手は、「動かない方が安全だ」という結論を、意識せずとも学習してしまいます。
これは若手の問題ではなく、職場の環境と上司の関わり方がつくり出している構造の問題です。
「先輩の背中」が見えなかった世代が、今の若手だ
もう一つ、見落とされがちな背景があります。
今、職場の中核を担いつつある3〜5年目の若手社員の多くは、コロナ禍に入社した世代です。
入社直後からリモートワークが当たり前になり、先輩や上司の仕事ぶりをリアルに見る機会がほとんどないまま、社会人生活をスタートさせました。
オフィスで働いていれば自然に目に入ってくるもの、例えば、先輩がどんな言葉でクライアントと話すか、上司がトラブルのときにどう判断するか、仕事が忙しいときにどう優先順位をつけるか。そういった「仕事の型」は、かつては見て盗むものでした。
ところがリモート環境では、その「見て盗む」機会が根こそぎ失われました。
会議室での雑談もなく、隣の席で先輩が電話する声も聞こえない。
自分が今やっている仕事の先に、どんな景色が広がっているのか、想像するための材料が、圧倒的に少ないまま育ってきた世代です。
動き方を知らないのではなく、動き方を見せてもらう機会がなかった。
そう捉え直すと、「指示待ち」という言葉の意味が少し変わってきませんか。
なぜ若手は「指示待ち」になるのか—4つの根本原因
Tenmaruが現場で見てきた「指示待ち」が生まれる構造を整理すると、大きく4つのパターンがあります。
① 「失敗したら怒られる」空気がある
自分から動いて失敗したとき、どんな反応が返ってくるか。
若手は無意識にこれを感じ取っています。「余計なことするな」「なぜ確認しなかった」という空気が職場にあると、若手は「動かない方が安全だ」と学習します。
主体的に動くことよりも、指示を待つ方がリスクが低いと判断しているわけです。これは合理的な判断です。若手のせいではありません。
② 仕事の「全体像」が見えていない
「このタスクが、どんな目的につながっているのか」「自分の仕事がチームや会社にどう貢献しているのか」…これが見えていない若手は、指示された範囲以外に手を出す理由が見つかりません。
特にリモート環境で育ってきた若手は、仕事の全体像を「見て覚える」機会が少なかった分、この傾向が強く出ます。全体像が見えないまま業務をこなしていると、「言われたことを正確にやる」こと以外の行動基準が持てなくなります。
③ 「何を期待されているか」が曖昧
「もっと積極的に」「自分で考えて動いて」…この言葉は若手に届きません。
何が「積極的」で、どのレベルで「自分で考えた」とみなされるのか、具体的な基準が示されていないまま求められても、動きようがないのです。「頑張れ」という抽象的な期待だけでは、若手は動けません。
④ 「動いたことへのフィードバック」がない
自分から動いてみたとき、上司が何もリアクションしなかったら、若手はその行動の意味を確認できません。承認も修正も得られないまま、「あの行動はよかったのか悪かったのか」がわからない状態が続くと、次第に自発的な行動が消えていきます。
Tenmaruの研修の場でも、「自分から動いたとき、上司に何も言われなかった」という経験を持つ若手が、思いのほか多くいます。フィードバックのない行動は、次の行動につながりません。
「動く若手」を育てる上司の3つの仕事術
では、上司として何ができるのか。Tenmaruが現場で効果を確認してきた3つのアプローチをご紹介します。
仕事術① 「なぜ」を先に渡す
タスクを渡すとき、「これをやっておいて」だけでなく、「なぜこれが必要か」「この仕事がどこにつながっているか」を一言添えるだけで、若手の動き方は変わります。
目的が見えると、人は自然に「ではこの部分はどうしよう」「こっちも確認しておいた方がいいかも」と考え始めます。「指示通りにやる」から「目的に向かって動く」への切り替えは、上司の「なぜ」一言から始まります。
先輩の背中を見て育つ機会が少なかった世代には、この「なぜ」を言葉にして渡すことが特に重要です。
忙しいときこそ、省かないことを意識してみてください。
仕事術② 「失敗を良しとする」を言葉と態度で示す
「失敗してもいい」とは言っても、上司が実際に若手の失敗に対してため息をついたり、そっけない反応をしたりすれば、言葉は信用されません。
大切なのは、若手が自分から動いたとき、”たとえ結果が不完全でも”…その「行動そのもの」を承認することです。
「自分で判断して動いてくれたこと、よかったよ」
「結果はともかく、考えて動いたプロセスは正解だ」
こうした言葉が積み重なることで、若手は「ここでは動いても安全だ」と感じるようになります。心理的安全性は、宣言するものではなく、日々の小さなやりとりで積み上げるものです。
Tenmaruが支援してきた企業の中にも、上司が「失敗を恐れないで挑戦してみよう」という言葉を使い始めてから、若手の発言量や行動量が目に見えて増えたというケースがいくつもあります。
仕事術③ 「期待」を具体的に言語化する
「もっと積極的に」ではなく、「今月末までに、自分からクライアントへの提案を1件持ってきてほしい」のように、期待を行動レベルまで落とし込みます。
定期的な1on1や面談の場で「今あなたに期待していること」を具体的に伝えること。
これだけで若手の主体性は大きく変わります。
Tenmaruの研修の場で、若手社員に「これまでのキャリアで転換点になった出来事は?」と問うと、「上司に『あなたにこれを任せたい』と言ってもらったとき」という答えが非常に多く出てきます。「言わなくてもわかるだろう」は通じません。言葉にして、渡すことが上司の仕事です。

上司としての役割に悩む管理職向けに、プレイヤーからマネージャーへの転換に必要な視点を解説しています。
「動かない若手」から「動ける若手」へ—転換のきっかけは上司にある
Tenmaruがこれまでの現場支援を通じて実感していることがあります。
「指示待ちだった若手が変わった」タイミングを振り返ると、そのほとんどに「上司の関わり方が変わった瞬間」があります。
仕事の目的を丁寧に伝えてもらった。小さな行動を認めてもらった。「あなたに期待している」と言葉でもらった、そういった体験が、若手の中に「動いていい」という許可を生み出します。
若手は「動きたくない」のではなく、「動いていいかどうかわからない」状態にいます。その迷いを解くカギは、上司の手の中にあります。
若手を「動かそう」とするのではなく、若手が「動きたくなる」環境をつくる。
この発想の転換が、職場の景色を変えるきっかけになります。

若手の早期離職を防ぐための環境設計について、「最初の90日」という視点から解説しています。
【公開講座のご案内】若手社員向け「指示待ち脱却」プログラム
上司側の環境づくりと並行して、若手社員本人が「主体的に動く力」を身につける機会も重要です。
Tenmaruでは、若手社員が自分から動けるようになるための公開講座を開催します。
【若手社員】6月25日(木)|あなたは大丈夫?『指示待ち人間と呼ばれない対処術』

こんな若手に受けてほしい:
- 「言われたことはやるけど、それ以上が出てこない」と言われている
- 自分では頑張っているつもりなのに、「もっと積極的に」と言われる
- 何から手をつければいいかわからず、つい指示を待ってしまう
こんな上司・人事担当者はメンバーの参加をご検討ください。
「上司が環境を整えること」と「若手が動く力を身につけること」の両輪が揃ったとき、チームは初めて自走し始めます。受講後すぐに職場で使えるスキルと考え方を、実践的なワークを通じて習得する3時間です。

社内研修としての実施や複数名でのご参加についても、お気軽にご相談ください。
Tenmaru公開講座2026|個の力を組織の成果に変える若手育成シリーズ
本講座は、若手社員の成長を年間でサポートする「Tenmaru公開講座シリーズ」の一環です。
「主体性を身につける→伝え方を磨く→キャリアを設計する」という3つのステップで設計されており、
1講座ずつ単発での受講はもちろん、シリーズ通しての受講がより効果的です。
研修を”イベント”で終わらせず、現場での行動変容につなげたい方に、ぜひシリーズ受講をおすすめします。
若手が動き出す組織は、上司の「ひと工夫」から始まります。
ワクドキな組織づくりを、一緒に始めましょう!

