「この会社にいて、自分は成長できているんだろうか」
夏の暑さが続くこの時期、そんな問いを胸の奥に抱えながら働いている若手社員が、全国にたくさんいます。
仕事には慣れてきた。でも、慣れることと成長することは違う気がする。
毎日同じことを繰り返しているだけで、自分がどこに向かっているのかわからない。
この「成長実感の欠如」は、若手社員の離職意向と深く結びついています。
私たちが、これまで関わってきた多くの企業で、離職した若手社員の退職理由を丁寧に聞くと、「給与が低かった」「仕事が嫌だった」より先に出てくる言葉が、「成長できる気がしなかった」であることが少なくありません。
では、「成長実感を持てる組織」と「持てない組織」は、何が違うのでしょうか。
今回のコラムでは、この問いに私の現場支援の経験からお答えします。
経営者・人事担当者・現場の責任者の方にはもちろん、若手社員本人にも読んでいただきたい内容です。
「成長している」のに「成長した気がしない」はなぜ起きるのか
まず、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
「成長実感が持てない」と言っている若手社員が、本当に成長していないのでしょうか。
必ずしも、そうではありません。
弊社が研修の場で若手社員と向き合うとき、「入社してからできるようになったことを書き出してみてください」というワークをやることがあります。最初は「たいしてないな……」という顔をしていた若手社員が、書き出してみると「あれ、結構あるな」と気づく。
この場面を、何度も見てきました。
つまり、成長はしている。でも、見えていない。
「成長実感」とは、成長の量の問題ではなく、
成長を「認識できているかどうか」の問題なのです。
成長を認識するためには、言語化が必要です。
「できるようになったこと」「乗り越えた壁」「半年前の自分との違い」
これらを言葉にするプロセスがなければ、どれだけ成長していても「した気がしない」まま時間が過ぎていきます。
そして “「言語化の機会」を、組織として意図的につくっているかどうか”
これが「成長実感を持てる組織」と「持てない組織」の、最初の大きな違いです。
「持てない組織」に共通するパターンとは?
若手社員が成長実感を持ちにくい組織には、いくつかの共通パターンがあります。
「できて当然」が積み重なっていく
新人のうちは「初めてのこと」が多いので、何をやっても新鮮で、成長を感じやすい。
ところが半年、1年と経つにつれ、できることが増えていくほど「できて当然」という扱いになっていきます。
「先月まではできなかったこと」が、今月には「当たり前のこと」になる。
その変化を誰も認識しない、誰も言葉にしない。
そうして若手社員は「自分は何も変わっていないのかな」と感じるようになります。
フィードバックが「ダメ出し」だけになっている
成長実感は、ポジティブなフィードバックと密接に関係しています。
「あなたはここが成長した」「以前よりこの点がよくなっている」
こういった言葉が、若手社員に「自分は前に進んでいる」という実感を与えます。
ところが多くの職場では、フィードバックが「ここが足りない」「もっとこうしてほしい」という改善要求ばかりになりがちです。
改善要求は必要なことですが、それだけでは若手は「足りない」という感覚しか積み重ならない。
「何ができるようになったか」と「何が足りないか」の両方を伝えること。
これが、成長実感を育てるフィードバックです。
「この先」が見えない
「今の仕事を続けていくと、自分はどうなるのか」
このビジョンが見えないことが、成長実感の欠如につながります。
目の前の仕事はこなせる。でも、これが積み上がってどこに向かうのか、3年後の自分がどんな仕事をしているのかが想像できない。
ゴールが見えない走りほど、消耗するものはありません。
「この先」を見せてあげること
キャリアの方向性を一緒に描く対話の場を持つこと
これが成長実感を生む土台になります。
「持てる組織」がやっていること
では、若手社員が成長実感を持てる組織は、何をしているのでしょうか。
①「振り返りの場」を意図的につくる
成長実感は、日常の業務の中から自然には生まれにくい。だから、意図的につくる必要があります。
月に一度の1on1でもいい。半期に一度のフォロー研修でもいい。
「あなたはこの期間でここまで成長した」を、言語化して届ける場をつくること。
以前、このnoteでご紹介した「レボチェック(レボリューションチェック)」毎日10〜15分、
ブラザー・シスターの先輩社員と新入社員が向き合う時間も、まさにこの「振り返りの場」のひとつです。
小さな積み重ねが、成長実感をつくっていきます。
②「成長を言葉で渡す」習慣を持つ
上司や先輩が、若手社員の変化に気づいたとき、それを言葉で伝えること。
「最近、報告が早くなったね」
「あのプレゼン、以前より格段によかった」
「半年前は自分から動けなかったのに、今は動けてるじゃない」
こういった言葉は、若手社員にとって「自分は見られている」「自分は認められている」という安心感になります。
そしてその安心感が、次の挑戦へのエネルギーになっていきます。
「言わなくてもわかるだろう」は通じません。
言葉にして、渡すことが成長実感を育てます。
③「伝える場」を若手社員に与える
ここで、少し違う視点をお伝えしたいと思います。
成長実感は、「受け取るもの」だけではありません。
「発信するもの」でもあります。
自分の考えを言葉にして、誰かに伝えた。
それが相手に届いて、何かが動いた。
この体験が、「自分は貢献できている」「自分の存在に意味がある」という実感を生み出します。
逆に言えば、「伝える機会」を持てない若手社員は、成長実感を持ちにくいのです。
「自分はこう思う」を言える場がない。
意見を出しても拾われない。
何か提案しようとしても「まだ早い」と言われる。
こういった環境では、若手社員はいつまでも「受け身の存在」のままでいることを強いられます。
だからこそ、我々が注目しているのが「伝え方」のスキルです。
「伝える力」が、成長実感を加速させる
「伝え方」というと、コミュニケーションの技術のように聞こえるかもしれません。
でも実は、成長実感と「伝え方」は深くつながっています。
「こう思っているんですが、どうですか?」と言える若手社員は、上司に自分の考えを渡せる。
渡せると、フィードバックが返ってくる。
フィードバックが返ってくると、「自分の考えがどこまで合っていたか」がわかる。
これが、思考の深化と成長実感を同時に生み出します。
「ありがとうございます、助かりました」と一言添えられる若手は、相手との関係が深まる。
関係が深まると、「あなたにお願いしたい」という仕事が増えてくる。
任される仕事が増えると、挑戦の機会が広がり、成長が加速します。
「周囲を巻き込む伝え方」が身につくと、単にコミュニケーションがうまくなるだけでなく、仕事の機会そのものが変わり、成長のスピードが変わります。
これまでの現場支援の中で、「伝え方を意識するようになってから、仕事が楽しくなった」という声を多くの若手社員の皆さんから聞いてきました。
「伝えられる」という体験が、「自分はここにいていい」という実感につながっていくのだと、確信しています。

「伝え方」が変わることで、若手の仕事がどう変わるかをより具体的に解説しています。
「成長実感」は、組織が意図的につくるもの
最後に、経営者・人事担当者・現場責任者の方にお伝えしたいことがあります。
「成長実感」は、若手社員が自力で持つものではありません。
組織が意図的に設計することで、生まれるものです。
振り返りの場をつくる。成長を言葉で渡す。伝える機会を与える。
この3つを、日常の中に組み込むことができるかどうか。
これは大きな投資や複雑な仕組みを必要としません。
上司の「最近どう?」という一言から始まることもある。
半年に一度のフォロー研修が、大きな転換点になることもある。
「成長実感を持てる組織」は、偶然できるものではありません。
意図を持って設計された組織だけが、若手を定着させ、育て続けることができます。
あなたの組織の若手社員は今、「成長している実感」を持てていますか?

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