「なんとなく仕事はできている。でも、このままでいいのだろうか」
研修の場で、こんな言葉を口にする若手社員に出会うことがあります。
入社2〜3年目になると、仕事そのものには慣れてきます。先輩に聞かなくてもこなせることが増えてくる。
でも、その「こなせている」感覚の裏側に、なんとも言えない漠然とした不安が芽生え始めることがあります。
「このまま続けていていいのか」「自分には何が向いているのか」「キャリアって、どう考えればいいんだろう」
明確な答えは見つからないまま、日々の業務に流されていく。
㈱Tenmaruでは、これまで多くの若手社員の育成に携わる中で、こうした2〜3年目の「静かな迷い」に向き合ってきました。
今回のコラムでは、この迷いの背景にあるものと、
若手社員が自分らしいキャリアを考えるために大切なことについてお伝えします。
経営者・人事担当者・現場の責任者の方にも、ぜひ考えていただきたいテーマです。
2〜3年目に訪れる、静かな転換点
入社1年目は、とにかく必死です。仕事を覚えること、職場に慣れること、先輩の背中を追いかけること。
目の前にすべきことが山積みで、「このままでいいのか」などと考える余裕はなかなかありません。
ところが2〜3年目になると、少しずつ「余白」が生まれます。一通りの業務を経験し、自分なりに仕事を進められるようになってくる。
すると、それまで目の前の仕事に向いていた意識が、少しずつ自分自身の将来へと向かい始めます。
「自分はどこに向かっているんだろう」
「この仕事を続けた先に、どんな成長があるんだろう」
そんな問いが、ふと浮かんでくるのです。
もちろん、すべての若手社員が同じように感じるわけではありません。
順調に成長を実感している人もいれば、新たな役割にやりがいを感じている人もいるでしょう。
一方で、仕事に慣れたからこそ、これまで見えていなかった自分の課題や将来への不安に気づく人もいます。
私は、この「このままでいいのか」という問いを、必ずしも後ろ向きなものだとは考えていません。
むしろ、自分のこれからに目を向け始めた、成長のきっかけかもしれません。
ただし、その問いを漠然とした「感覚」のまま抱え続けていると、
何を変えればよいのか、どこに向かえばよいのかが分からず、立ち止まってしまうことがあります。
「なんとなく」を言語化すると、仕事への向き合い方が変わる
「もっと成長したい」「やりがいのある仕事がしたい」「自分に向いている仕事を見つけたい」
若手社員から、こうした声を聞くことがあります。どれも大切な思いです。
しかし、もう少し掘り下げてみると、「成長とは何か」「どんなときにやりがいを感じるのか」「何をしているときに自分らしさを発揮できるのか」が、まだ明確になっていないことも少なくありません。
例えば、「もっと成長したい」という思い一つをとっても、その意味は人によって異なります。専門的な知識を身につけたい人もいれば、お客様から信頼される存在になりたい人もいる。後輩を指導できるようになりたい人もいれば、新しい仕事に挑戦してみたい人もいるでしょう。
自分にとっての「成長」が何を意味するのか。
それが言葉になると、今取り組むべきことも少しずつ見えてきます。
「なんとなく頑張る」から「この力を身につけるために頑張る」へ。
「なんとなく不安」から「ここが課題だから、まずはこれをやってみよう」へ。
キャリアを言語化することは、将来の目標を決めるためだけではありません。
今の自分を理解し、目の前の仕事に新たな意味を見いだすことにもつながります。
私たちが若手社員のキャリア形成を支援する中で大切にしているのも、まさにこのプロセスです。
キャリアを「感覚」から「設計」へ変える3つのステップ
では、若手社員が抱える漠然とした迷いを、これからの成長につなげるためには、何が必要なのでしょうか。
大切なのは、すぐに答えを出そうとすることではありません。
まずは自分自身を知り、これからの可能性を考え、
具体的な行動につなげていくこと。
私たちが若手社員のキャリア形成を支援するうえで、次の3つのステップを大切にしています。
① 自分を知る—経験・強み・価値観を言語化する
最初のステップは、「今の自分」を見つめ直すことです。
これまでどんな仕事に取り組み、何ができるようになったのか。
どんな場面でやりがいを感じ、どんなときに難しさを感じたのか。
上司や先輩から、どんなことを評価されたのか。
日々の業務に追われていると、自分の成長や変化を振り返る機会は意外と少ないものです。
だからこそ、一度立ち止まり、これまでの経験を整理してみる。
すると、「当たり前にやっていたことが、実は自分の強みだった」「自分はこんなことにやりがいを感じるんだ」といった、新たな気づきが生まれます。
また、仕事や人生において何を大切にしたいのか、自分自身の価値観を知ることも重要です。
「成長」「貢献」「安定」「挑戦」「人とのつながり」など、何を重視するかは人それぞれです。
自分が大切にしている価値観を言語化することで、仕事に対する満足感や違和感の理由が見えてくることもあります。
自分の強みと価値観を知ることは、自分らしいキャリアを考えるための出発点です。
② 未来を描く—自分なりの可能性を広げる
自分自身を理解したら、次はこれからのキャリアについて考えます。
ただ、若手社員に「5年後、10年後の自分はどうなっていたいですか?」と尋ねても、明確に答えられる人ばかりではありません。
だからこそ、未来の描き方は一つではないと考えています。
例えば、将来のありたい姿から逆算して、
今必要な経験や行動を考える「バックキャスティング法」。
「3年後には、こんな仕事ができるようになりたい」
「将来は、周囲からこんな存在として頼られたい」
そんな未来のイメージを描き、そこに向かうための道筋を考えていきます。
一方で、日々の仕事の中で感じた小さな手応えや興味・関心を手がかりに、将来の可能性を広げていく方法もあります。
こうした考え方の一つが「兆し展開法」です。
「最近、こんな仕事がうまくいった」
「この業務に取り組んでいるときは、時間を忘れるほど夢中になれる」
「周囲から、こんなことを褒められた」
こうした日々の経験の中には、自分でも気づいていない強みや、将来の可能性につながるヒントが隠れていることがあります。
目指す未来がある程度見えている人もいれば、まだ探している途中の人もいる。
大切なのは、最初から明確な正解を求めることではなく、自分なりの方向性を少しずつ見つけていくことです。
そして、今の仕事で得られる経験が、その未来にどうつながっているのかを考えてみる。
未来を描くことは、今の仕事の意味を捉え直すことでもあるのです。
③ 行動につなげる—「明日から何をするか」を決める
自分を知り、未来の方向性を考えたら、最後は具体的な行動につなげていきます。
「もっと成長したい」「自信をつけたい」という思いだけでは、日々の行動はなかなか変わりません。
例えば、
- 自分の強みを活かせる仕事に、積極的に手を挙げてみる。
- 苦手だと感じていた業務に、小さな目標を設定して挑戦する。
- 上司との面談で、自分が今後経験してみたい仕事を伝える。
- 新しい知識やスキルを身につけるために、学習する時間を確保する。
そんな小さな一歩でも構いません。
重要なのは、自分で考え、納得して行動を選ぶことです。
そして、行動した結果を振り返り、必要に応じて方向性を見直していくこと。
キャリアプランは、一度立てたら変えてはいけないものではありません。
むしろ、経験を重ねながら変化していくものです。
新たな仕事への挑戦や思いがけない出会いが、興味や価値観を変え、これまで想像していなかった可能性を広げてくれることもあるでしょう。
キャリアデザインとは、
将来の職業や役職を決めることだけではありません。
自分の可能性を知り、今の仕事とのつながりを見つけ、これからの行動を自分で選んでいくこと。
その積み重ねが、キャリア自律につながっていくのだと考えています。
若手のキャリア形成を、本人任せにしていませんか?
「2〜3年目の社員には、そろそろ主体的に動いてほしい」
「指示された仕事はできるけれど、自分から挑戦する姿勢が見えない」
経営者や人事担当者の方から、そんな声を伺うことがあります。
もちろん、主体性は大切です。
しかし、毎日の業務をこなす中で、自分自身のキャリアを振り返り、将来の可能性を考えることは、決して簡単ではありません。
新入社員研修はある。OJTで現場のスキルを磨く機会もある。
でも、入社2〜3年目以降、自分の強みや価値観、今後のキャリアについてじっくり考える機会は、どれくらい用意されているでしょうか。
育成体系を見直してみると、業務スキルや知識を習得する機会はあっても、自分自身のキャリアについて考える機会が十分に設けられていないことがあります。
ここで大切なのは、若手社員に一方的に将来の目標を考えさせることではありません。
自分の強みに気づく機会をつくること。
さまざまなキャリアの可能性を知る機会をつくること。
そして、本人が考えた方向性を、上司や組織が一緒に支えていくこと。
例えば、研修で自分の強みや今後の目標を整理しても、職場に戻った後、その思いを上司と共有する機会がなければ、せっかくの気づきが日々の行動につながりにくいこともあります。
だからこそ、キャリアデザイン研修だけで完結させるのではなく、その後の面談や日々の育成ともつなげていくことが重要です。
本人がどんなことに挑戦したいのか。どんな強みを伸ばしていきたいのか。
そのために、組織としてどんな経験や機会を提供できるのか。
こうした対話が、若手社員の主体性や成長を後押しすることにつながります。
キャリア形成の主役は社員本人ですが、
その可能性を広げる環境づくりには、企業にも大切な役割があります。
「迷い」は、成長のエネルギーになる
「このままでいいのか」という問いは、必ずしも悪いことではありません。
むしろ、自分自身のこれからを考え始めたサインかもしれません。
その問いを、ただの不安として終わらせるのではなく、
新しい可能性を見つけるきっかけにしてほしい。
「自分には、こんな強みがあったんだ」
「今の仕事にも、こんな成長の機会があるんだ」
「まずは、これに挑戦してみよう」
そんな気づきが一つでも生まれれば、仕事への向き合い方は少しずつ変わっていきます。
私たちが大切にしているのは、一人ひとりが自分の強みや価値観を理解し、自分らしいキャリアを主体的に考えられるようになることです。
そして、その一人ひとりの成長が、組織の成長にもつながっていくこと。
若手社員が「この会社で、こんなことに挑戦してみたい」と思える機会を、企業と一緒につくっていきたいと考えています。
若手社員のキャリア形成・人材育成について
Tenmaruでは、企業ごとの人材育成課題や社員の成長段階に合わせたキャリアデザイン研修を実施しています。
自己理解やキャリアビジョンの明確化にとどまらず、
日々の仕事への向き合い方や具体的な行動につなげるプログラムを、各社の状況に応じて設計しています。
また、キャリアデザイン研修にとどまらず、
若手社員の成長段階に応じた育成体系の構築から、研修後のフォローアップまで、一貫して支援しています。
「若手社員の主体性を育みたい」「入社2〜3年目の育成を充実させたい」「若手育成の体系を見直したい」
そんな課題がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

2026年3月に実施した若手社員向け研修のレポートです。受講者の声とともに、自分自身と向き合い、これからの行動を言語化することの大切さをご紹介しています。







